年々新卒採用が早まっているという話をよく聞きますね。いわゆる、「青田刈り」という現象ですね。では、なぜ企業は優秀な学生をいち早く囲い込んでしまいたいと考えるのでしょうか。一言でいえば、不景気な世の中だからということになります。昨今の慢性的な不景気により、どの企業もいろんな意味で余裕がなくなってきていると言えます。どの企業も、なんとかして利益を出そうとしますから、まず高すぎる人件費は決して歓迎すべきことではないということになります。そこで、ターゲットになってくるのは中高年の高給取りの社員となります。今でこそ年々お給料が上がっていくということは当たり前ではなくなってきたものの、昔は勤続年数に応じて給与があがっていくような仕組みでした。だから、今の中高年の社員というのは高給取りが多い。だから、高給取りの中高年の人に辞めてもらえばいい。やや乱暴に言ってしまえば、そういう論理でリストラが実行されていく側面はあると思います。そして、その代わりに安月給の若年者を雇おうということになります。
基本的に、中高年の社員は熟練労働者であると言えます。でも、若年労働者は安月給だからと言って、クオリティの低い仕事でもよいということにはなりません。そういう流れから、新卒で入ってくる若者にも即戦力を求める傾向が強まってくるのだと思います。高止まりの失業率や若者の離職率の増加という慢性的な問題の前に、社会全体が若者をゆっくり育てていこうという余裕がなくなってきているのは、ゆゆしき事態と言えるでしょう。ここまでは、企業がいち早く優秀な新卒を囲い込みたい理由や背景について説明してきました。では、実際に新卒採用が年々早まっていくとどのような問題があるのでしょうか。
当然のことですが、新卒採用の時期が早まれば、学生側の就職活動開始時期も早まっていきます。大学生の本業は勉強することだと思います。もちろん、机上の勉強だけではなく、色々な社会体験も含めての勉強だとは思うのですが、よりよい就職を目指すためだけに大学生活を送るのは、あまりにもさびしい事態だと考えます。せっかくの大学生活が、姑息な就職テクニックを身につけることに終始してしまうとしたら、学生にとっては決して好ましいことではありません。また、そういう就職テクニックに長けた新卒が入社してくるのは、企業にとっても良いことだとは思えません。このように見てくると、新卒採用開始時期の問題を引き起こす背景には、慢性的な問題を多く抱えた社会の在り方が密接に絡んでいると言えそうです。もっと社会全体に余裕が生まれ、企業側、学生側双方にとって、よりより新卒採用が行われるとよいなぁと切に願っています。